高級腕時計の時計通信

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30.12.2016

そこまでやる!!クォーツにもクロノメーターを通すブライトリング ~時計の“精度”の話~

Komehyo

ブログ担当者:前川

 

ブライトリングの時計の魅力を語るときに、必ず登場するのが「全ての時計にクロノメーターを通している」という点です。

 

「クロノメーターって?」と思う方のために少し解説します。クロノメーターとは、外部の公的機関による時計の“精度”検査です。スイスの時計であれば、スイス公式クロノメーター検査協会(COSC)という機関が行います。

 

通常クロノメーターは、自動巻式などの機械式時計に対して行う検査でした。しかし、なんとブライトリングはクォーツ時計にもクロノメーターを通しているのです。

 

今週は、ブライトリングがクロノメーターにかける情熱のお話です。

↑クォーツにもクロノメーターを通すブライトリング

 

 

 

 

 

 

■クロノメーターの存在意義は?

 

まずはクロノメーターの存在意義についてです。その意義を理解するには、時計の“精度”について知る必要があります。少し精度について述べさせていただきます。

 

現在の私たちの感覚では、「時計はあまり狂わないもの」というイメージがあるのではないでしょうか。実際に現代の時計は“ある程度の高精度”を実現しています。下で少しまとめてみます。

 

 

<現代の時計の精度>

①クォーツ時計

一般的なもので、月差±15秒ほど

 

②電波時計・GPS時計

動作の精度はクォーツ同様だが、原子時計の時刻データを電波で受信し修正する

 

③携帯電話・スマホ

 システムとしては電波時計であり、基地局や衛星からの時刻データを電波で受信し修正する

 

 

↑衛星から時刻データを取得するGPS電波時計

※画像はセイコー「アストロン」

 

簡単にまとめると、現代の時計は「電波を受信すればほぼ正確、受信しなければ月差±15秒ほど」ということです。月に15秒ほどの誤差であれば、“数ヶ月で1分ずれる”感覚ですので、十分正確に感じます。しかし、伝統的なゼンマイで動く機械式時計(自動巻式・手巻式)は、ここまで高精度ではありません。こちらも、下でまとめてみましょう。

 

 

<伝統的な機械式時計の精度>

④安価な機械式時計

大量生産の精度を追い込まない機械式時計なら、日差±1分以内

 

⑤クロノメーターではない高級機械式時計

個体差もあるが、許容できるイメージは日差±30秒以内

 

⑥クロノメーターの機械式時計

合格基準が決められており、日差+6~-4秒以内

↑専用機器で精度がチェックできます

 

 

先に現代の時計の精度を紹介する際に、1ヶ月での誤差である“月差”で表現しました。しかし、機械式時計は月差で表現できるほど高精度ではありませんので、1日での誤差である“日差”で表現します。仮に、1日に1分ずれる機械式時計があったとしたら、理論上は月に30分ほどずれてしまいます。1日に30秒であれば、月に15分のずれになります。やはり比較してしまうと、クォーツ時計の“月差15秒”が高精度に感じ、機械式時計の精度が劣っていると感じます

 

しかし、それも当然なのです。時計の歴史上、クォーツ時計は機械式時計を凌駕するハイテクな発明品として登場したのですから。精度の面では近代のハイテク時計に分がありますが、機械式時計は“職人がつくる作品”として価値があるのです。

 

最近の機械式時計は部品の製造である程度は機械化していますが、組み立てや精度調整は時計師が手作業で行っています。そのため機械式時計を高精度にするためには、部品の加工精度の向上、ムーブメント機構の工夫、さらに時計師の高い技能が必要です。つまり、電子回路を利用するクォーツ時計とは異なり、機械式時計を高精度にするためにはコストがかかるのです。

 

そのため、

「高精度な機械式時計 = 高級品

という方程式が成り立ちます。

 

そして、高精度である“お墨付き”の役目をしているのが、クロノメーターという訳です。これが、現代のクロノメーターの存在意義のひとつです。

 

 

 

 

 

 

■ブライトリングが誇る“スーパークォーツ”

 

機械式時計が高精度であることは、簡単なことではありません。だからこそ、機械式時計はクロノメーターというお墨付きを提示して、その凄さをアピールするのです。そのため、ブライトリング、ロレックス、オメガなどは、自社の機械式時計にクロノメーターを通します。

 

しかし、クォーツ時計に対してもクロノメーターを通そうとするのがブライトリングです。なぜ既に高精度であるクォーツ時計にクロノメーターを通す必要があるのでしょうか?私は、以下の2つの理由だと考えています。

 

 

①ラインナップの全てをクロノメーターにすることによって、「100%クロノメーター」という分かりやすさを作る

 

②一般的なクォーツ時計よりさらに高精度の時計を作り、他のメーカーとの差別化を図る

 

 

この2つを実現するために、ブライトリングは成し遂げないといけないことがありました。それは、“一般的なものより高精度なクォーツ時計の開発”です。これは技術的な問題であり、ブライトリングの開発力が重要になります。

 

ブライトリングにより産み出されたのが、一般的なクォーツの約10倍の高精度を誇る“スーパークォーツ”です。2001年に導入されました。これは、“月差”ではなく、“年差±15秒”と言われる高精度を実現したのです。つまり、月に1秒強ほどの誤差しか発生しない、驚異の高精度のです。因みにクォーツのクロノメーター合格基準は、日差±0.07秒以内です。つまり、年差にすると約±26秒以内です。ブライトリングのスーパークォーツは、大きく基準をクリアしていることになります。

 

クォーツ時計に使用される水晶は経験を積ませれば安定感が上がりますので、ブライトリングは厳選され経験を十分に積ませた水晶を採用します。さらに、クォーツ時計は温度変化により精度誤差が生じる弱点がありますが、温度センサーを活用して温度により歩度を調整する機能が付いています。まさに、ブライトリングのクォーツ時計は“スーパークォーツ”です。

 

 

 

<“スーパークォーツ”モデルの例>

エアロスペース

舶来時計では珍しいデジアナ(デジタル・アナログ)モデル。複数の機能を1つのリューズで操作します。

 

↑エアロスペース

 

・コックピットレディ

女性用のクォーツブライトリングにも、クロノメーターを通しています。

 

↑コックピットレディ

 

 

私は、クォーツ時計の“月差±15秒”に満足せず、精度をさらに追究したブライトリングの姿勢を高く評価しています。クォーツ時計にクロノメーターを通すという需要がある訳ではないのに、「全ての時計をクロノメーター仕様にするためにそこまでやるのか!」と感じるかもしれません。コストもかかるでしょう。しかし、ブライトリングは本当にやり遂げました。その情熱には脱帽です!

 

さらに、GPS電波時計が登場した現在は世界中で受信ができ、腕時計は正確な時間が提供できる環境にあります。しかし、まだまだGPS機能のあるムーブメントは小型化できていませんので、デザインに制約があります。その点で、成熟しているクォーツ時計であれば、小型でも年差時計にすることが可能です。現にブライトリングは女性用のクォーツ時計にもクロノメーターを通しています。進化するハイテクウォッチですが、まだまだ高精度クォーツ時計は有用です。

 

ブライトリングのクロノメーターへの情熱と、クォーツ時計へのこだわり、凄いです!

 

 

 

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