17.1.2023
【考察】ロレックスの認定中古が始まることによる影響とは?
Komehyo
ブログ担当者:須川
2022年の最後に大きなニュースがあり、時計業界で大きな話題になりました。
それは、
ロレックスが認定中古の取り扱いを始める
というものです。
↑ロレックス正規店で中古品が購入できるようになる
認定中古については、ロレックスの公式ウェブサイト(こちら)でも説明されているので、しっかりとメーカーとして関わっている取り組みのようでうす。
ロレックス公式の説明によると、大きなポイントは下の2つです。
①ロレックスが本物であることを保証
②2年間の正規保証をつける
つまり、「正規新品を購入するときに近い安心感で、中古品を購入できる」のです。この点が、ロレックスの認定中古を選ぶメリットのようです。
このロレックスの認定中古は、現在は海外でのみ販売している状況ですが、ゆくゆくは日本でも開始されるでしょう(2023年の春以降との情報あり)。そうなれば、日本でも大きな影響があるでしょう。そこで今回は、このロレックスの認定中古が始まることによる影響を予想し、私なりの意見を紹介させていただきます。
■ロレックスはなぜ認定中古を始めるのか?
まずは、「ロレックスはなぜ認定中古を始めるのか」という点を想像してみます。
これは、ロレックスが認定中古を始めることで得られるメリットを考えると分かりやすいでしょう。それは、次のようなものです。
①メーカーとしてのメリット
→販売可能な在庫を提供できる状況を作れるので、店頭在庫が不足している状況を不満に思う消費者に対応できる
②販売店のメリット
→販売できる商品量が増えるので、売上増加が見込める
特に、今、ロレックスの正規販売店に行っても、特に人気モデルは、「サンプルのみで、販売できる商品はございません」という対応が多くなっています。そのため、今すぐ買いたい消費者は、正規店以外へ行って購入をするでしょう。認定中古を扱うことは、その状況を改善できるので、ロレックスにとっては大きいのかもしれません。
■ロレックスの認定中古がもたらす影響とは?
次に、ロレックスの認定中古が、日本のマーケットにもたらす影響を考察します。
まずは、その考察のための前提となる知識として、ロレックスの認定中古がどのような位置づけになるかを確認します。この位置づけを見るポイントとして、販売価格とラインナップについて確認します。
①販売価格
ロレックスの認定中古の販売価格がどのようなものになるかは、先行で始まっている海外の認定中古価格を確認すると良いでしょう。
そこで、実際にスイスの正規販売店の認定中古品を確認してみました。もちろん、たくさんの認定中古品があったので、わかりやすい2つのサンプルモデルをピックアップしました。その2つは、当社の中古品在庫があるものから選定し、執筆時点の価格を比較します。
・GMTマスターⅡ/116710LN/保証書付き
→2008年製で21000スイスフラン(約290万円)
(※当社では2010年製で180万円)
・シードゥエラー/16600/保証書なし
→2001年製で12800スイスフラン(約177万円)
(※当社では2002年製で135万円)
つまり、
一般中古価格 < 認定中古価格
と考えられます。
私が聞いている話では、認定中古の販売価格の設定は、販売店に委ねられているそうです。そのため、販売店ごとに価格が違うはずです。つまり、ここで例示した価格はあくまでサンプルのひとつに過ぎません。しかし、現状を知るという意味では、有益な情報です。
ただし、おそらく、海外の認定中古販売店も、まだ手探り状態で価格設定していると思いますので、今後は価格設定を変えていく可能性はあります。
②ラインナップ
認定中古がどのようなラインナップになるかについてです。
私が聞いている情報では、認定中古は、
・正規販売店での販売から「3年以上」経過している必要がある
という条件があるのみのようです。
↑3年以内の個体は認定中古の対象外
そのため、3年以上経過していれば、現行モデルからヴィンテージモデルまで、幅広くラインナップする可能性があります。ただし、認定中古は「だれかが売る」という行為があって初めて発生するものなので、どのようなモデルが入荷するかは時の運ということになります。
前提知識を確認しましたので、次は、本題の「認定中古が日本のマーケットにもたらす影響」についてです。これは、あくまで個人的な考察となりますので、ご了承ください。
最大の影響は、
認定中古価格が一般中古価格の“上限ライン”に設定されるようになる
という状況が生まれる点です。
例えば、現在の一般中古価格の設定セオリーは、以下のような状況にあります。
①新品在庫がマーケットにある場合
→新品価格までが、中古価格の上限ライン
②新品在庫がマーケットにない場合
→中古価格の上限ラインはない
(販売店の見込みで自由に設定)
例えば、生産終了モデルは基本的に新品在庫がマーケットに出ませんので、これらは中古価格が自由競争的に決まります。販売条件や販売力が高い場合はより高い中古価格を設定できますし、その逆の場合は中古価格を抑えて設定することになります。
↑生産終了モデルの中古価格は自由競争的
しかし、ロレックスの認定中古が日本でも展開されると、状況が変わります。
なぜなら、認定中古は「正規の中古品」であり、一般の中古品の上位に位置づけられるからです。ポジショニングを表すと、以下のようになります。
新品※>認定中古>一般中古
※新品在庫がある場合
これが、そのまま価格のヒエラルキーに反映されますので、認定中古が「一般中古の価格上限ライン」を作ります。つまり、これまでは新品在庫があれば新品価格が中古価格の上限ラインを作っており、新品在庫がなければ自由競争的に中古価格が設定される状況でした。しかし、認定中古在庫がマーケットに投入されると、一般中古の価格はそれを越えられないので、価格の制約が生まれるのです。
新パターン:認定中古が基準を作る
認定中古在庫がマーケットにある場合
→認定中古価格までが、中古価格の上限ライン
(新品在庫よりも、認定中古の方が影響がある)
さて、ここで皆さんが気になるのは、「認定中古の影響は、消費者にはプラスなの、マイナスなの?」という点だと思います。これは、認定中古販売店がどのような価格設定をするかによって変わります。
↑認定中古の影響は、消費者にはプラス?マイナス?
例えば、中古品の買取金額が、認定中古も一般中古もあまり変わらないと仮定します。そして、次に問題になるのが、認定中古を「良心的な価格で(薄利で)売る」か「プレミアムな価格(厚利で)売る」かです。
もし、認定中古を良心的な価格で売ることになれば、一般の中古価格はそれよりも安く設定しないといけないので、今よりも安い価格で一般中古が購入できることになります。この状況なら、消費者にはプラスです。
逆に、認定中古を、今の一般中古価格とはかけ離れたプレミアムな価格で売ることになればどうなるでしょう。この場合、基本的には、一般中古の価格を押し下げるような影響を与えないでしょう。この状況であれば、現状維持ですので、消費者には特に大きな影響はないはずです。
しかし、もしかすると、認定中古がプレミアムな価格をつけたことにより、一般中古価格が認定中古価格に近付いていく現象が起こる可能性も考えられます。これは、一般中古が「認定中古よりは安い」という武器を手にするので、強気の価格に挑戦できるからです。もしこの状況になれば、消費者にはマイナスと言えるかもしれません。
つまり、消費者にプラスになる場合、特に影響がない場合、逆にマイナスになる場合と、いくつかのパターンが想定されます。これは、その時になるまで、どうなるかは未知です。
さらに、私が気になっているポイントがあります。それは、
「“正規修理をした一般中古”と“認定中古”の価値の差が、どれぐらいになるのか」
という点です。
説明をすると、ロレックスの正規オーバーホールを行った中古品には、「2年間の正規の修理保証」が付きます。この“2年間の正規修理保証がついた一般中古”と、“認定中古”を比較したときに、消費者は大きな差を感じるでしょうか?どちらも、ロレックスがメンテナンスして保証をつけた状況なので、この差をどう評価するかです。
↑正規OH後、2年間の修理保証がつく
人によっては、「この2者に差を感じず、より安い方を選択する」をいう考えを持つでしょう。逆に、「正規店で購入できる体験に満足感を感じる」と考える方は、認定中古の存在は大きいでしょう。この辺りが、どのように日本人に受け取られるかが、今の私の興味です。
■最後に
今回は、ロレックスの認定中古がもたらす影響について、私の考察を説明しました。私の考察の結論としては、「認定中古の価格設定によって、展開が変わる」というものです。それは、消費者にプラスの場合、特に影響がない場合、逆にマイナスになる場合の、どれも想定できます。
現状で言うと、スイスの認定中古販売店では、一般中古よりかなり高い価格を設定している印象です。しかし、これはまだ始まったばかりの手探り状況での話です。もし、認定中古の売上が芳しくない場合は、価格をもっと下げてくるかもしれません。さらに、これは、海外の話であり、日本での展開は別かもしれません。
とにかく、今は、日本で認定中古が始まるのを待つしかありません。その際に、どのような状況になるかわかるはずです。皆さんも、是非、ロレックスの動向をチェックしてみてください!
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