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14.8.2020

【ロレックスのウンチク話】デイトナに起こった、2016年のタキメーター事変!

Komehyo

ブログ担当者:須川

 

■【ロレックスのウンチク話】デイトナに起こった、2016年のタキメーター事変!

 

2016年、ロレックスの「デイトナ」に、大きな変化がありました。

 

それは、「ベゼル仕様の変更と統一」です。

 

例えば、一番目立つモデルを挙げると、ステンレスのデイトナがモデルチェンジしました。

それまでのデイトナ116520は金属製のベゼルでしたが、2016年の新たなデイトナ116500LNはセラミック製ベゼルに変更になりました。

 

しかし、ベゼルをよく見てください。実際、ベゼルに起こった変更は、“素材の変更”だけではありません。同時に、ベゼルの“タキメーターの字体”も変更になっています

タキメーターの変更点を見てみましょう。“旧タキメーター”は、数字の向きが「全て12時上向き」で揃っており、目盛りは「ドットとバー」を用いたものです。しかし“新タキメーター”は、数字の向きが「外側上向き」になっており、目盛りは「三角マークとバー」を用いています。新旧でかなりデザインを変えた印象です。

 

このタキメーターの字体の変更が、ステンレスモデルでのみ起こったのであれば、それほど気にすることでもないでしょう。しかし実際は、このタキメーターの字体の変更が、ステンレスモデルだけでなく、イエローゴールドモデルやロレゾール(コンビ)モデルでも起こりました

 

つまり、ロレックスは2016年に、デイトナのタキメーター字体を同じものに統一したのです。

 

この現象を、今回は「タキメーター事変」と呼び、紹介させていただきます。

 

 

 

 

 

 

■デイトナの新旧タキメーターの歴史から「タキメーター事変」を知る

 

今回はデイトナの「タキメーター」の話です。便宜上、タキメーターを“字体”で「新」と「旧」で使い分けますので、ご理解ください。

そして、今回の「タキメーター事変」を理解していただくには、前提として、デイトナの新旧タキメーターの歴史を踏まえる必要があります。ここでは、その歴史から「タキメーター事変」を紹介します。

 

“旧タキメーター”は、1988年登場のメタルバンドの5桁デイトナ(16520、16523、16528)の時代に登場します(※1)。厳密に言うと、これらのデイトナの初期は最大時速目盛りが「200」でしたので、その後に続く「400」の目盛りをもつ“旧タキメーター”は、5桁デイトナの途中から誕生したことになります。

↑メタルバンドの5桁デイトナ(旧タキメーター)

 

そして、“新タキメーター”ですが、この登場は特に最近というわけではありません。実は、1991年に革バンドの5桁デイトナ(16518)が登場するのですが、このモデルが“新タキメーター”を採用し始めます。

↑革バンドの5桁デイトナ(新タキメーター)

 

そして1996年に、革バンドの5桁デイトナの別モデル、16519が登場します。このモデルも“新タキメーター”を採用しましたので、この時点で、デイトナのタキメーター字体の使い分けが明らかになります。それは、以下の通りです。

 

 

 

<初期のタキメーター字体の使い分け>

 

旧タキメーター

・メタルバンドモデル

 

新タキメーター

・革バンドモデル

 

 

 

その後、デイトナは2000年にモデルチェンジし、5桁から6桁になります。この2000年時点で登場したモデル(116520、116523、116528、116519、116518)も、初期のタキメーター字体の使い分けを踏襲していました。つまり、メタルバンドが“旧タキメーター”で、革バンドが“新タキメーター”です。

 

しかし、2004年以降、タキメーター字体の使い分けの法則が崩れます。まず、2004年に登場したデイトナ116509は、メタルバンドにもかかわらず、“新タキメーター”を採用したのです。そして、2008年に誕生した116505、2013年に誕生した116506も同じく、メタルバンドで“新タキメーター”でした。

↑116509:メタルバンドだが新タキメーターを採用

 

つまり、2004年以降、デイトナのタキメーター字体の使い分けは以下のようになります。

 

 

 

<2004年以降のタキメーター字体の使い分け>

 

旧タキメーター

・ステンレス(メタルバンド)

・ロレゾール(メタルバンド)

・イエローゴールド(メタルバンド)

 

新タキメーター

・革バンドモデル全般

・ホワイトゴールド(メタルバンド)

・ピンクゴールド(メタルバンド)

・プラチナ(メタルバンド)

 

 

 

この「2004年以降のタキメーター字体の使い分け」を見ると、複雑になったことがわかります。具体的に言うと、革バンドモデルは依然として“新タキメーター”採用で統一されていますが、メタルバンドモデルは素材によって使い分けがされました。このようになった理由は、おそらく、シンプルなものでしょう。

 

つまりそれは、単純に「新規モデルに、“新タキメーター”を与えた」というだけなのでしょう。

 

少し補足します。かつて、メタルバンドのデイトナは3つの素材(ステンレス・ロレゾール・イエローゴールド)しか存在しませんでした。しかし2004年以降、ホワイトゴールド・ピンクゴールド・プラチナ素材のメタルバンド仕様が登場します。つまり、新たなデイトナの種類が増えたのです。

 

ロレックスは、それまでの法則から離れて、これらの新規モデルには、“旧タキメーター”ではなく“新タキメーター”を与えたということです。

 

さて、あらためて、この時点での状況を確認しましょう。この時点だけを切り取ると、“イエローゴールドモデルだけ”バンドの違いでタキメーターの字体が使い分けられ、その他のモデルは、素材により使い分けられる状況になっています。まさに、複雑な状況です。

↑イエローゴールドモデルだけ“新旧”を使い分け

 

そして、2016年、この複雑な状況が解消されます。それが、「タキメーター事変」です。

 

つまり、この年にロレックスは、全てのデイトナのタキメーターを“新タキメーター”にしたのです。

↑全てのデイトナを“新タキメーター”に

(116503)

 

そのため、2016年のロレックスの新作で、次のデイトナが登場します。

 

 

 

①116500LN(ステンレス/メタルバンド)

 

②116503(ロレゾール/メタルバンド)

 

③116508(イエローゴールド/メタルバンド)

 

 

 

これらのモデルは、先の「2004年以降のタキメーター字体の使い分け」で“旧タキメーター”に分類したモデルの、“新タキメーター”仕様です。これで、“旧タキメーター”モデルをなくして、全デイトナのタキメーターの字体を統一したのです。

 

時計業界では長らく、この複雑な状況により、デイトナの型式の把握が煩雑になっていました。時計業界で仕事をする身として、私はずっと、この煩雑な状況をロレックスに改善して欲しかったのです。それが、ようやく2016年に訪れました。実際、行われた「タキメーターの字体統一」により、型式のパターンが統一され、ラインナップがシンプルになりました。この煩雑さが解消したことは、私にとっては、とてもインパクトのあることでした。そのため、私はこの件を、「タキメーター事変」と名づけたのです。

 

 

 

 

 

 

■最後に

 

今回は、2016年に起きたロレックスのトピックとして、「タキメーター事変」を紹介しました。皆さんも、機会があれば、ロレックスの2016年の新作を振り返ってみてください。このブログを読んでいただいた皆さんなら、きっと、その年の新作デイトナの意図がわかるはずです。

 

また、補足的に紹介すると、2016年には大人気のデイトナ「116508グリーン」と「116509ブルー」が登場しています。もちろん、どちらも“新タキメーター”です。

↑上:116508グリーン、下:116509ブルー

 

今回振り返ってみると、やはり、2016年はデイトナにとって重要な年だと、改めて感じました!

 

 

 

 

※1・・・ロレックスの「桁」については、過去の投稿をご参照ください

↓↓↓

「ロレックスを検討中の方は知っておきたい! ロレックスの型式の知識 ~「6桁」「5桁」って何のこと?~」

 

 

 

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