高級腕時計の時計通信

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22.10.2019

【名作をやさしく解説】ヴァシュロンコンスタンタン「オーヴァーシーズ」

Komehyo

ブログ担当者:川澄

 

■「オーヴァーシーズ」をやさしく解説

 

今週は、高級時計の名作を“やさしく解説”する企画です。

 

今回取り上げる作品は、

 

ヴァシュロンコンスタンタンオーヴァーシーズ

です。

 

 

 

 

 

■「オーヴァーシーズ」の特徴を押えよう!

 

まずは、「オーヴァーシーズ」の特徴を押えましょう。

 

オーヴァーシーズは、スイスの名門時計メーカー「ヴァシュロンコンスタンタン(Vacheron Constantin)」の代表モデルです。ヴァシュロンコンスタンタンは1755年創業であり、時計業界でも屈指の歴史の長さを持つメーカーです。その老舗メーカーが、1996年に発表したスポーティなモデルがオーヴァーシーズです。

 

百聞は一見にしかず。下の画像をご覧ください。

この画像は、現在のオーヴァーシーズです。2016年に発売されたRef.4500V /110Aという型で、美しいローターをもつ、ジュネーブシール取得のCAL.5100を搭載しています。デザインの特徴としては、ブランドロゴになっている“マルタ十字”の意匠を取り込んだデザインです。実際に、ベゼル・ブレスのデザインは“マルタ十字”から来ており、一流ブランドのロゴが持つ特別な意味合いを一身にうけた魅力あるデザインといえます。まさに、外見と内面ともに最高峰の腕時計です。

現行モデルからも伺えるように、オーヴァーシーズはスポーティなデザインが特徴です。そして、その外観に見合うように、高い実用性を備えます。具体的には、「高い防水性」や「高い耐磁性」があります。特に、現代社会の悩みである“磁気”に対して強い点は、私たちのデイリーユースに最適でしょう。

 

つまり、オーヴァーシーズは、

 

・ヴァシュロンコンスタンタンの中ではスポーツタイプ

 

・高い実用性がある

 

という点が特徴です。

 

この特徴のために、数あるヴァシュロンコンスタンタンのモデルの中でも、屈指の人気を誇ります。

 

 

 

 

 

 

■「オーヴァーシーズ」の誕生について

 

次に、「オーヴァーシーズ」の誕生についてです。

 

実は、オーヴァーシーズは、突如生まれたモデルではなく、前身があります。

その前身が、ヴァシュロンコンスタンタン創立222周年を記念して作られた、1977年発表の「222」です。

↑「222」

 

前身である222も、オーヴァーシーズと同様に「スポーティウォッチ」でした。当時から“高い防水性”と“薄さ”を両立しており、オーヴァーシーズにつながるコンセプトをもった時計でした。

 

では、なぜ長い歴史を持つヴァシュロンコンスタンタンが、得意の複雑機構の時計や伝統的なドレスウォッチではなく、222という「スポーティウォッチ」の製造に取り組んだのでしょうか。それは、当時の時計業界の時代背景が関係します。

 

実は、1970年ごろから、日本のセイコーが発売した「アストロン」をきっかけに、クォーツ時計が台頭しはじめました。高い精度をもち、かつ、大量生産で安価に製造ができるクォーツ時計は、次第に“高級機械式時計”からシェアを奪っていきます。倒産や休止に追い込まれる時計ブランドが相次ぐ厳しい状況の中、ヴァシュロンコンスタンタンも差別化できる戦略を打ち出しをします。その戦略のひとつが、機械式の薄型スポーティウォッチ「222」です。

 

事実として、この222が礎となり、オーヴァーシーズが1996年に登場します。つまり、クォーツ時計によって追い込まれたことによって、ヴァシュロンコンスタンタンからスポーティな作品が生まれることとなったのです。

 

 

 

 

 

■「オーヴァーシーズ」を魅力的にする強力なライバルの存在

 

オーヴァーシーズには強力なライバルが存在し、その相乗効果で魅力を高めている印象があります。そのライバルとは、“三大雲上ブランド”に括られる「パテックフィリップ」と「オーデマピゲ」のスポーティモデルです。

↑オーデマピゲ「ロイヤルオーク」

↑パテックフィリップ「ノーチラス」

 

ライバルのひとつは、パテックフィリップの「ノーチラス」。特徴的な「耳」のあるデザインはとても印象に残り、同じく防水性の高い薄型モデルです。もうひとつのライバルは、オーデマピゲの「ロイヤルオーク」。ロイヤルオークは、このライバル関係にある3つのモデルの中では一番歴史が古く、“元祖薄型スポーツウォッチ”ともいえます。

 

ノーチラスとロイヤルオークはともに人気が高く、スポーツウォッチ界のスターです。このスターの存在があることで、そのライバル関係にあるオーヴァーシーズにもスポットが当たっている状況があります。ただし、ノーチラスとロイヤルオークの人気が余りにも大きいために、少々オーヴァーシーズの影が薄い現実もあります。しかし、人気と実力はまた若干違うもの。次で、スペックを比較しながら、オーヴァーシーズの良さを探っていきます。

 

 

 

 

 

 

■「オーヴァーシーズ」のスペック

 

では、オーヴァーシーズのスペックを紹介します。その性能をよりわかりやすくするために、ライバル関係にあるロイヤルオーク(型式15500ST)、ノーチラス(型式5711/1A)、オーヴァーシーズ(型式4500V/110A)を比べてみます。

 

 

 

①防水性

ロイヤルオーク→50m

 

ノーチラス→120m

 

オーヴァーシーズ→150m

 

 

②パワーリザーブ

ロイヤルオーク→70時間

 

ノーチラス→45時間

 

オーヴァーシーズ→60時間

 

 

 

防水性ですが、デイリーユースであれば、生活防水レベルの50mあれば十分です。現に、ロイヤルオークは50m防水にしています。しかし、ヴァシュロンコンスタンタンは、オーヴァーシーズに150m防水を与えました。これは、オーヴァーシーズを「スポーティなデザインのモデル」にするのではなく、しっかりと実力も伴わせた「ハイスペックモデル」にしたかったのでしょう。

 

また、ゼンマイ持続時間であるパワーリザーブは、一般的な機械式時計であれば、50時間以内のものが多いです。例えば、48時間(2日間)パワーリザーブの腕時計なら、「1日ぐらい着けない日があっても止まらない」点で、デイリーユースでは便利と言えます。しかし、最近はパワーリザーブを長くするトレンドがあり、今では、60~72時間ほどのパワーリザーブが増えてきています。オーヴァーシーズもしっかりとそのトレンドに対応できており、約60時間のパワーリザーブを実現しました。

 

さらに、オーヴァーシーズには、ロイヤルオークにもノーチラスにも無い「優れた耐磁性」という武器があります。これは、オーヴァーシーズの大きな特徴と言って良いでしょう。様々な電化製品が生活を取り囲む現代では、非常に助かる特徴です。

↑150m防水、耐磁性ありの刻印

 

このように、スペックを見ると、オーヴァーシーズの優れたポイントが見えてきます。

 

 

 

 

 

 

■オーヴァーシーズの系譜のデザイン変遷

 

最後に、222から始まるオーヴァーシーズの系譜のデザイン変遷も押えておきましょう。

 

ロイヤルオーク、ノーチラス、オーヴァーシーズ(前身は222)は、いずれも歴史あるシリーズですが、この中ではオーヴァーシーズが一番最後に登場したモデルになります。高級時計としては歴史の深さが評価されることが多いので、歴史的な評価では、一番歴史が古いロイヤルオークが高い評価をされています。

 

特に、鬼才ジェラルドジェンタ氏デザインのロイヤルオーク(1972年)とノーチラス(1976年)は、デザインの面で金字塔とされるモデルです。その後の1977年に登場したヨルグイゼック氏デザインの222は、優れたデザインですが、どうしても「ジェンタ氏のモデルに追随した時計」と評価されがちです。

 

しかし、222から始まるオーヴァーシーズの系譜は、「デザインを柔軟に変化させながら進化している」点で、魅力があります。その変化の変遷を、紹介しましょう。

 

前述のように、1977年に「222」が登場します。その後、1980年代の「333」、1990年代の「フィディアス」を経て、1996年には最初のオーヴァーシーズ(第一世代)が登場します。

そして、オーヴァーシーズが登場してからも、どんどんとデザインのアップデートは進みます。2004年には第二世代のオーヴァーシーズが登場し、2016年には現行の第三世代のオーヴァーシーズが登場します。

 

現行のオーヴァーシーズは、それまでのモデルと比較して、ベゼルのデザインが大きく変わります。具体的には、ベゼルの突起部分が8つから6つに変わりました。そして、ケースの形は、トノーに近い形状からより丸みを帯びたデザインになっています。ブレスレットも以前のシンプルなデザインからマルタ十字デザインを取り入れたものに変わり、アップデートが進みました。

 

ケースサイズは、第一世代の37㎜(ラージモデル)、第二世代の42㎜、第三世代の41㎜と、時計業界の流行によって細かにアジャストしています。

 

オーヴァーシーズの系譜のモデルのように、歴史あるデザインをどんどんと変えていくのは、伝統ブランドとしては珍しいのではないでしょうか。そして、その変化によって、新しい価値を作るヴァシュロンコンスタンタンの自信が垣間見えます。オーヴァーシーズはライバルモデルと比べると後発モデルですが、後発モデルが故に、オリジナルデザインに固執せずに新しいデザインにチャレンジできます。それが、私が考えるオーヴァーシーズの良さです。

 

 

 

 

 

 

■最後に

 

以上のように、オーヴァーシーズはライバルモデルの陰に隠れがちな点はありますが、実用性やデザインで優れている良さがあります。さらに、デザインのアップデートが時代に合わせて行われる点もオーヴァーシーズの魅力です。

 

今は、ロイヤルオークやノーチラスという花形に後塵を拝しているとしても、下地は揃っているので、いつか評価が上がっていく可能性も十分にあるのではないでしょうか。そのため、私にとっては“大穴”という印象のある時計です!

 

 

 

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