高級腕時計の時計通信

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20.12.2020

【ランゲ&ゾーネを考察】「ダトグラフ」が誕生した意味を考える

Komehyo

ブログ担当者:須川

 

■【ランゲ&ゾーネを考察】「ダトグラフ」が誕生した意味を考える

 

ドイツ最高峰の時計メーカーであるランゲ&ゾーネには、ダトグラフというモデルがあります。この名称は「デイト」と「クロノグラフ」を合わせた造語だそうです。つまり、「日付機能」と「クロノグラフ機能」を併せ持つモデルが、ダトグラフというわけです。

↑ダトグラフ

 

このダトグラフは、ランゲ&ゾーネの中でも“上位機種”として作られているモデルで、その完成度の高さは凄まじいものがあります。機能面でも、より上位機能の「フライバッククロノグラフ」ですし、日付機能も「アウトサイズデイト」が搭載されます。

 

そして何といっても、ムーブメントが凄いのです。実は、ダトグラフは高級時計の中でも、「最も美しいムーブメントをもつモデル」のひとつとして、よく取り上げられます。画像でムーブメントを見ていただくと、その美しさは一目瞭然でしょう。まさに、芸術品のように感じます。

↑美しいムーブメント

 

ダトグラフはこのような存在ですので、時計愛好家から大きな支持を得ています。きっと、この美しいムーブメントを見ることができることは、大きな喜びでしょう。

 

では、なぜダトグラフは作られることになったのでしょうか?今回は、この疑問について考えたいと思います。

 

 

 

 

 

 

■ダトグラフた誕生した意味を考察

 

ダトグラフが誕生した意味を考察するために、まずは、歴史を振り返ります。

まず、ダトグラフが発表されたのは、1999年のことです。この年は、ランゲ&ゾーネ再興後の初作が1994年に登場していますので、そこから5年経った年です。初作の4モデルはどれも印象に残る存在でしたが、特に「ランゲ1」は時計業界で大きな話題となり、かなり高い評価を得ました。並のメーカーであれば、それで満足してしまうかもしれません。

 

しかし、ランゲ&ゾーネは、それだけでは満足しませんでした。1994年の成功を受けた翌年、つまり、1995年にダトグラフのムーブメントの開発が始まります。これは、ダトグラフのキャリバー名がCal.951.1ですので、その頭数字「95」を見ると実感できます(実際は、もっと前から構想されていたようですが)。

 

私も、基本モデルを作った後、定番機構の“クロノグラフ”をラインナップに加えようとする行動は理解できます。ランゲ&ゾーネもそのように考えたはずで、「ランゲ&ゾーネらしいクロノグラフを作ろう」と思ったはずです。その“らしさ”には「品質」や「審美性」が挙がると思いますが、「どの程度のクオリティまで作り込むか」という点を決めるには、感覚的な基準が必要になるはずです。

 

そこでベンチマークされるのは、おそらくパテックフィリップでしょう。なぜなら、ランゲ&ゾーネはドイツの最高峰メーカーなので、スイスの最高峰メーカーを意識するのは当然だからです。この点は、正式な証言はありませんが、ランゲ&ゾーネがパテックフィリップのクオリティを知らないわけがありませんので、基準のひとつになることは十分にあると思います。

↑パテックフィリップ/3970

 

実際、1995年当時、パテックフィリップに純粋なクロノグラフモデルはありませんでしたが、「永久カレンダークロノグラフ」は存在していました(※1)。例えば、Ref.3970などがその例ですが、それらのモデルはレマニア製の手巻きムーブメントCal.2310をベースに、最上級のモディファイがされていました。

 

※1・・・その後、パテックフィリップは1998年にクロノグラフモデルRef.5070を発表します。

↑レマニア2310に最上級のモディファイ

 

レマニア2310は、1940年に設計されたムーブメントが元で、コラムホイール・キャリングアーム式のクラシカルな設計です。それを、パテックフィリップは、ジュネーブシール仕様にまでブラッシュアップします。そのため、このパテックフィリップのクロノグラフムーブメントは、本当に美しい外観をしています。

 

再興したばかりの“後発ブランド”として存在を示す必要のあるランゲ&ゾーネは、きっと、「このパテックフィリップのクロノグラフムーブメントより上のクオリティを目指す」と、感覚的に思ったはずです。そしてもちろん、超えるためには、“同じ土俵”である必要があります。

 

つまり、ランゲ&ゾーネは、

 

①“クラシカルな設計”のクロノグラフムーブメント

 

②“美しい”ムーブメント

 

という、“同じ土俵”で、パテックフィリップのクオリティを超えたいはずです。

 

そして、結果的にランゲ&ゾーネが完成させたムーブメントが、「Cal.951.1」です。Cal.951.1は、パテックフィリップのクロノグラフのように、コラムホイール・キャリングアーム式でクラシカルな構造をしています。そして、外観は、黄味がかったジャーマンシルバーに、ブルースチールのネジ、そして、発色の良いルビーとゴールドシャトンを使用し、ため息が出るほどの美しさです。

↑コラムホイール・キャリングアーム式のCal.951.1

 

そして、「彫刻されたテンプ受け」や「巻上げヒゲ」だけでなく、「プレシジョンジャンピングミニッツカウンター」も搭載しています。私から見ても、十分、パテックフィリップを超えた印象です。

 

つまり、このとき、“時計業界最高峰のクロノグラフムーブメント”が誕生したのです。

 

これが、ランゲ&ゾーネがダトグラフが作った意味だと、私は考えます。その後、このダトグラフのムーブメントは、逆にライバルメーカーからベンチマークされる存在になった点も、凄いところです。それだけ、ダトグラフは業界内に影響を与えています。まさに、「歴史的な傑作」なのです!

 

 

 

※ダトグラフについては、動画でも解説しましたので、是非、ご覧ください。

↓↓↓

 

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