高級腕時計の時計通信

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31.7.2017

【ディープなトケイ通信】モリッツグロスマンはランゲ&ゾーネの牙城を崩せるか?(後編) ~モリッツグロスマンの課題~

Komehyo

ブログ担当者:須川

 

前回、前々回の投稿で、より深い時計の世界をお届けする“ディープなトケイ通信”として、

 

「モリッツグロスマンはランゲ&ゾーネの牙城を崩せるか?(前編) ~モリッツグロスマンの良さ~」

 

「モリッツグロスマンはランゲ&ゾーネの牙城を崩せるか?(中編) ~モリッツグロスマンとランゲ&ゾーネの価格と製品を比較~」

 

をお届けしました。

 

今回は後編として、本題の「モリッツグロスマンはランゲ&ゾーネを越えられるのか?」という疑問について、私なりの見解を紹介します。今回の内容のポイントは、「モリッツグロスマンの課題」についてです。この課題がクリアできれば、モリッツグロスマンは高みにいけるブランドなのです。

↑モリッツグロスマンの課題とは?

 

 

 

 

 

 

 

■モリッツグロスマンの課題は“アイコンモデル”の不在

 

結論から言うと、モリッツグロスマンの課題は、「時計業界に浸透する“アイコンモデル”をもっていないこと」です。もちろんこれは私の完全な私見ですが、逆にこの課題をクリアできると、モリッツグロスマンは“大化け”できるブランドだと感じています。

 

例えば、ロレックスは「サブマリーナ」、オメガは「スピードマスター」、ジャガールクルトは「レベルソ」、パテックフィリップは「カラトラバ」など、名の知れる人気メーカーは象徴的なモデル(アイコンモデル)をもっています。ここでのアイコンモデルは、“各メーカー内の代表モデル”ではなく、“時計業界を代表するモデル”という意味です。

 

因みに、ドイツブランドの頂点に立つランゲ&ゾーネも「ランゲ1」というアイコンモデルをもっています。

↑ランゲ1

 

もちろん、人気の時計メーカーの全てがアイコンモデルをもっているわけではありません。例えば、ヴァシュロンコンスタンタンやロンジンなどは、強いアイコンモデルをもっていません。しかし、強いアイコンモデルをもたないメーカーは、“長い歴史”という別の武器をもっています

 

また、“アイコンモデル”も、“長い歴史”ももたないメーカーでも、“大きな話題を作り出すレベルの革新性”があれば人気メーカーの仲間入りができます。この場合の“革新性”は、マニアックなものではなく、「業界全体で話題になるレベル」であることが大事です。例えば、リシャールミルが好例ではないでしょうか。リシャールミルは「身に着けるF1マシン」と言われる革新性があったこそ評価されています。

 

一度、下で“人気メーカーの条件”をまとめます。

 

 

<人気メーカーの条件>

①時計業界を代表するアイコンモデルをもつ

②長い歴史をもつ

③大きな話題を作り出すレベルの革新性をもつ

 

 

②の“長い歴史”は、残念ながら新鋭のモリッツグロスマンにはありません。③の革新性はモリッツグロスマンのブランドイメージからすると、そこまで到達するのは難しいように思います。やはり、モリッツグロスマンは、①のアイコンモデルを作ることに注力すべきです。

 

 

 

 

 

 

■モリッツグロスマンの現行モデルはアイコンモデルになれるか?

 

モリッツグロスマンの現在のモデルは、「ベヌー」、「アトゥム」、「テフヌート」です。一部、トゥールビヨン機能とパワーリザーブ表示機能をもったモデルがありますが、基本的には“3針”または“2針”のシンプルでクラシカルなモデルです。

↑ベヌー(左)、テフヌート(右)

 

ここで、近年の時計業界に誕生したアイコンモデルを思い返してみます。例えば、2000年以降で考えてみます。

 

 

<2000年以降に誕生した“新規アイコンモデル”>

・シャネル「J12」

・ルイヴィトン「タンブール」

・ベル&ロス「BR01」

・ウブロ「ビッグバン」

・コルム「バブル」

・ブレゲ「トラディション」

・ゼニス「クロノマスター・オープン」

・カルティエ「カリブル・ドゥ・カルティエ」

・ロジェデュブイ「エクスカリバー」

・エドックス「クラス1(クロノオフショア1)」

・ジェイコブ「ファイブタイムゾーン」

など

↑新規アイコンモデルはデザインインパクト大

 

 

やはり、2000年以降に誕生した“新規アイコンモデル”は、ほとんどが“スポーティさ”または“デザインインパクト”をもつ時計です。現在も人気のシンプルでクラシカルなアイコンモデルは、「過去から存在する伝統のあるモデル」ばかりです。歴史や伝統をもたないクラシカルなモデルが、新たなアイコンモデルになることは難しい状況に感じます。わずかな例として、2000年に登場したフィリップ・デュフォーの「シンプリシティ」がありますが、これは「部品ひとつひとつまで手作り」というある種の“企画もの”といえます。これは例外中の例外です。

 

近年誕生したアイコンモデルの傾向からも、モリッツグロスマンの現在の製品ラインナップからアイコンモデルを排出することは難しいのではないでしょうか。そもそも、ベンチマークするランゲ&ゾーネの「ランゲ1」もデザインインパクトをもつモデルです。ランゲ&ゾーネは、「ランゲ1」や「ダトグラフ」などインパクトのあるモデルの成功があるからこそ、シンプルな「1815」や「サクソニア」にもスポットが当たるのです。

 

やはり、モリッツグロスマンがランゲ&ゾーネに挑むためには、「デザインインパクトのある新モデルを作り上げること」が必須です。そのデザインインパクトのあるアイコンモデルが誕生すれば、シンプルな現在のモデルにもスポットが当たるようになるでしょう。

 

 

 

 

 

 

■最後に

 

今回は、モリッツグロスマンの課題として、「アイコンモデルが不在なこと」を紹介しました。なぜ、このような「余計なお世話」のようなことを言うのかというと、私がモリッツグロスマンに期待しているからです。

 

1990年代から始まり、2000年代もさまざまなブランドが誕生しました。しかし、成功せず撤退をするブランドも多くありました。しかし、モリッツグロスマンには“本物感”があります。細部へのこだわり、マニアックな機能など、面白みがあります。だからこそ期待するのです。実はかつて、私はショパールにも同じようなことを感じていました。LUC1.96という最高のムーブメントを開発しながら、なかなかアイコンモデルを産み出すことができなかったのです。

 

是非ともモリッツグロスマンには、アイコンモデルを産み出してもらいたいです。もしそのアイコンモデルが、「ランゲ1」を越える人気を獲得できたなら、モリッツグロスマンはランゲ&ゾーネを越えることができるかもしれません。

 

これからも、ドイツ時計ブランドのナンバーワン争いを期待して、見守っていきたいと思います!

 

 

 

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