高級腕時計の時計通信

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8.9.2017

知っていると時計通!「ビッグデイト」はランゲ&ゾーネが流行らせた(前編) ~なぜビッグデイトが流行ったのか?~

Komehyo

ブログ担当者:許

 

腕時計デザインにも流行があります。それは、以前の投稿「高級腕時計選び、あなたは何年代派? ~人気は90年代!?~」でも紹介しています。

 

実は時計業界で、1990年代の終わりから2000年代の前半ごろにかけて流行った有名デザインがあります。

 

それは、「ビッグデイト」です。

↑ビッグデイト

 

ビッグデイトは、日付を大きく見せる機能です。多くのメーカーはビッグデイトと呼ばず、「グランドデイト」、「グランデデイト」、「グランギシェ」、「ダブルウィンドウ」と呼んでいたりします。構造としては、日付の“十の位”と“一の位”を別々にして、2つの日付表示プレートを使用します。つまり、“十の位”プレートは「1、2、3、空白」の4パターン、“一の位”プレートは「1、2、3、4、5、6、7、8、9、0」の10パターンを表現します。この組み合わせで日付を表示します。

 

実はこのビッグデイトは時計業界で、ランゲ&ゾーネが流行らせたことで知られています。今週は、このビッグデイトが腕時計に採用され、流行った経緯を振り返ります。

 

 

 

 

 

 

 

■「ビッグデイト」はなぜ流行ったのか?

 

上で紹介をしたように、ビッグデイトは2000年を跨ぐ年代に、時計業界で流行しました。流行になった最大のきっかけは、ランゲ&ゾーネの再デビュー作のひとつ「ランゲ1(ワン)」が“衝撃の話題作”になったからです。

↑ランゲ&ゾーネ「ランゲ1」

 

ランゲ1は、1994年に突如登場します。理想のプロポーションとされる“黄金比率”を用い、計算尽くされたダイヤルを持ちます。さらに、表現しきれないほど美しい仕上げが施されているのです。そして、オフセンターに配置された文字盤レイアウトの一角に、ビッグデイトが採用されていました。因みにランゲ&ゾーネでは「アウトサイズデイト」と呼ばれます。

 

このランゲ1のデザインと完成度は圧巻で、すぐに時計愛好家たちの話題となります。もちろん、その話題には“ビッグデイトの採用”についても含まれます。なぜ話題になるかと言うと、それまで「腕時計にビッグデイトがあまり採用されてこなかったから」です。

 

そして、ランゲ1誕生の1994年から数年経過すると、「我負けじ」と、他のメーカーもビッグデイトを採用し始めます。ここからビッグデイトの流行りの始まりです。

 

私はビッグデイトが流行った理由を、

 

“目新しい”機構でありながら、技術的には比較的模倣しやすいものだったから

 

と考えています。

 

 

<2000年以前のビッグデイト採用例>

・ユリスナルダン「パーペチュアル・ルードビッヒ」

 

・ブライトリング「クロスウィンド・スペシャル」

 

・ダービー&シャルデンブラン「アエロディーンデイト」

 

・モーリスラクロア「マスターピース・グランギシェ」

 

・カルティエ「パシャC・グランデデイト」

↑左:パシャC・グランデデイト

 右:クロスウィンド・スペシャル

 

 

上では“2000年以前にビッグデイトを採用した例”を挙げています。これらのモデルは、比較的早い時期に追随したモデルと言えます。つまり、まだビッグデイトという機能が“目新しい”時代でしたので、この機能の採用がひとつの個性として通用しました。しかし、2000年代に入ると、年々“目新しさ”がなくなっていき、次第にビッグデイトを採用することは下火になっていきます

 

また、ビッグデイトが下火になった別の理由として、“故障リスク”が気になり始めた点も挙げられます。実はビッグデイトは、日付変更操作を乱暴に行うと故障する恐れがあります(※1)。つまり、ビッグデイトは、“十の位”と“一の位”のプレートのパターン管理を行う複雑さがあるため、通常の日付機構よりもデリケートに扱わないといけないのです。これは、「複雑機能ほどデリケートである」という、時計業界の常識に当てはめると、当たり前のことです。しかし、当たり前のこととはいえ、リスクであることには変わりはありません。ビッグデイトから登場初期にあった“目新しさ”がなくなると、当然、故障リスクの方が目に付き始めます。それが、もうひとつの下火になった理由に感じます。

 

 

 

 

今回は、ビッグデイトが流行った経緯を、個人的な見解を踏まえながら紹介しました。

 

まとめると…

 

 

1.きっかけ

→ビッグデイトを採用する「ランゲ1」の登場

 

2.流行った理由

→“目新しさ”と“技術的な模倣しやすさ”があったため

 

3.下火になった理由

→“目新しさ”というメリットが減り、“故障リスク”というデメリットの方が気になり始めたため

 

 

…ということです。

 

 

 

さて、ランゲ1がビッグデイトを採用したのは画期的でしたが、その発想はどこからきたのでしょうか?実は、ランゲ&ゾーネがビッグデイトを発想するのは“容易なこと”でした。

 

なぜなら、ビッグデイトにはルーツがあるからです。

 

次回は続編として、ビッグデイトのルーツに迫ります。

 

 

 

 

※1・・・ビッグデイトの日付変更操作は、通常「リューズを一段引っ張る→回す」という手順です。その回す操作時は、「ゆっくりと」「やさしく」行ってください。故障する恐れのある操作としては、リューズを速過ぎるペースで回してしまうことです。せっかちな方は要注意です。

 

 

 

※後編はこちら

↓↓↓

知っていると時計通!“ビッグデイト”はランゲ&ゾーネが流行らせた(後編) ~ビッグデイトのルーツとは?~

 

 

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