高級腕時計の時計通信

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18.2.2023

ロレックスの採用する「オイスタースチール」と呼ばれる外装素材とは? ~316Lを超える「904L」ステンレス~(2023/2/18追記あり)

Komehyo

ブログ担当者:須川

※2023/2/18追記(青文字部)

 

■ロレックスの採用する「オイスタースチール」と呼ばれる外装素材とは? ~316Lを超える「904L」ステンレス~

 

腕時計の外装部分は何でできているイメージがあるでしょうか?もちろん金・プラチナ・チタン・セラミックなど様々な素材が外装素材として採用されていますが、最も採用されているのは「ステンレス」です。

 

  私たちの身近なところでイメージするステンレス製品と言えば、キッチン用品・家具の骨組み部分・窓枠などがあると思います。その私たちの身の回りにあるものと同じステンレスが時計に使われているかというと、必ずしもそうではありません。つまり、ステンレスにも種類があり、用途やコストのバランスでステンレスは使い分けられています

 

↑キッチンや窓枠などでも使われるステンレス

 

詳しくは後から述べますが、時計にも安価なものから高級なものまであり、高級時計の中には外装素材に「高級ステンレス」を採用するメーカーもあります。その中でも、「ロレックスは他のメーカーより更に上を行く『オイスタースチール』と呼ばれる外装素材を使っている」ということを紹介させていただきます。  

 

↑スーパーステンレスを採用するロレックス

※画像は116660「シードゥエラーディープシー」

 

 

 

 

まずは、ステンレスという素材について簡単に触れます。  

 

 

<ステンレス>

正式には「ステンレス鋼」。鉄を主成分とし、クロムなどを10.5%以上含む素材。鉄は50%以上。その配合により多くの種類のステンレスがありますが、製品に使われる種類としては「430」や「304」というものが主流です。ステンレスの存在意義を簡単に説明するなら、「錆びる」という弱点のある鉄にクロムなどを混ぜることによって錆びにくくしたという点です。

上の説明の通り、一口に「ステンレス」と言ってもその配合により非常に多くの種類があります。そのため、ステンレスの種類について語る時は、「316L」のように数字やアルファベットなどを織り交ぜて表現される名称を使う必要があります。以下の文章でも「304」「316L」「904L」などの名称が登場しますので、それはステンレスの種類のことと理解して下さい。      

 

 

 

 

 

 

■時計業界で一般的なステンレスは「304」と「316L」

 

時計業界で一般的に採用されるステンレスは「304」という種類です。例えば、私たちの身の回りにあるキッチンシンクや窓枠にも「304」ステンレスが使われています。それと同じ種類のステンレスが時計に使われているということです。

 

しかし、ブライトリングやパネライなどのスイスの一流メーカーはより耐蝕性のある「316L」という高級ステンレスを主に使っています。前述した「304」に「モリブデン」という物質が加わった素材が「316」であり、それに炭素量を減らし更にバージョンアップさせたものがより錆びにくい「316L」です。時計業界以外に目を向けると、“サージカルステンレス”と呼ばれ、メスなどの医療用品で使われているステンレスです。          

 

 

 

 

 

■ロレックスが採用する「904L」

 

ロレックスは「316L」よりも更に耐蝕性の高い超高級ステンレスである「904L」を採用しています。このステンレスを、ロレックスは「オイスタースチール」と呼んでいます。

 

時計の外装素材に「904L」を採用すること自体が珍しいことですので、「904L」採用はロレックスのひとつのアイデンティティになっています。

 

↑ロレックスは904Lを採用する

 

「904L」は本来、化学産業分野で使われていたステンレスです。「ステンレス」ではありますが、鉄の配分が50%ぐらいまで減るそうですので、ステンレスとしての定義ギリギリまで鉄以外の物質が配合されています。まさに究極のステンレスです。それをロレックスが時計業界で初めて採用したと言われています。定説としては、「90年代頭ぐらいからロレックスが使い始めた」とされています(※1)。私を驚かせるのは、サブマリーナなど海水で使用することを想定された時計だけに「904L」を採用したわけではなく、モデル全体に採用を始めた点です。

 

最近ではロレックス以外のメーカーでも採用例があると聞いたことがありますが、「904L」の採用は多くの時計メーカーが真似できることではありません。資金力があり生産本数の見込めるロレックスだからこそ、採用に踏み込めたのだと思います。しかし、その根底にはサブマリーナやシードゥエラーというダイバーズウォッチをラインナップしているロレックスが、更なる実用性を追い求めた「改良精神」があるのだと思います。そして結果として、ダイバーズウォッチ以外のデイトナやGMTマスターなども「その恩恵」を受け、ロレックスのモデル全体の実用性を押し上げているという好循環があります。      

 

※最近では、ジンやボールウォッチにも、904Lを採用するモデルがあります。

 

 

 

 

 

 

最後に、個人的な感覚ではありますが、私がステンレスに触れれた時の印象を述べたいと思います。安価なステンレスの時計は触ったときに「皮膚にくっ付くような」印象があります。しかし、ロレックスのステンレスモデルは「さらっと」した心地よい感触を私は感じます。一度ロレックスを評価する際に、着け心地をチェックしてみてはどうでしょうか?

 

 

 

※1・・・執筆後、ロレックス正規ホームページに「1985年から」という記載を発見いたしました。この情報がもっとも正確かと思われます。

 

 

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