高級腕時計の時計通信

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21.8.2017

【番外編】国産ブランドの最高峰!日本の伝統技法が光る「ナミキ万年筆」の魅力

Komehyo

ブログ担当:栗田

 

 

万年筆の選び方について数回にわたり投稿してきたところですが、今回は少し脇道に逸れ、万年筆のブランドについて書いてみようと思います。以前、世界最高峰のブランド「モンブラン」について書かせていただいたので、今回は「日本の最高峰ブランド」について取り上げてみたいと思います。ぜひお付き合いください!
モンブランの記事はこちらから

 

 

 

さて、皆さんは「ナミキ万年筆」という名の万年筆をご存知でしょうか?

ナミキとは、日本の伝統工芸である漆や蒔絵を使用した万年筆を製造し世界中にファンを持つ、日本が誇るブランドの1つです。今回は、このナミキ万年筆の特徴や歴史を紐解きながら、その魅力に迫りたいと思います。

 

 

 

 

■ナミキとはどんなブランド?

ナミキは、有名な日本の筆記具メーカー「パイロット」が展開するブランドの1つで、パイロットの前身である「並木製作所」の魂を受け継ぎ、独自の路線として世界中に愛される万年筆を製作し続けているラインです。

 

高度な蒔絵の技術である「研出高蒔絵」を施した最高級の大型万年筆「エンペラーコレクション」や、四季折々の絵柄を繊細で多彩な技法を駆使して表した「ユカリコレクション」などがあります。

 

↑「ナミキ」ブランドの万年筆

 

 

 

 

■ナミキ万年筆の「特徴」

ナミキ万年筆の特徴はなんといっても、日本の伝統工芸である「漆」や「蒔絵」を採用している点です。漆の艶やかな手触りとボディに施された繊細な蒔絵や沈金、螺鈿の細工は、ただの筆記具としての用途を超えて、まさに美術品のような風格を備えます。

 

↑繊細な細工が美しい蒔絵の万年筆

 

 

↑ペン先には日本の最高峰「富士山」のデザインが

 

 

 

並木製作所が万年筆に「漆」や「蒔絵」を取り入れるようになった背景には、当時使用されていた素材の欠点を克服するべく模索したことがあります。1918年の並木製作所の創業当時、万年筆の軸の素材の主流は「エボナイト」という硫黄とゴムの合成樹脂でした。エボナイトはインクへの耐久性に優れていましたが、色落ちなどの経年劣化が発生しやすいことが欠点でした。そこで並木製作所が注目した素材が、耐酸性・経年劣化に優れた日本の伝統工芸である「漆」です。

 

独自の製法により漆を使用した軸の開発に成功すると、さらに並木製作所は漆工芸の一つである「蒔絵」を万年筆に施すという進化を遂げました。当時の万年筆は彫金による装飾が主流であったなか、並木製作所は美しさと強さを兼ね備えた日本の伝統工芸である「蒔絵」を採用することにより独自の路線を確立しました。

 

 

 

 

■ナミキ万年筆が世界的に成功した理由は?

1925年の蒔絵万年筆の登場から約90年経ってもなお世界中で愛される「ナミキ」ブランド。その成功の秘密はどこにあるのでしょうか? 私は、以下の2点に集約されるのではないかと思います。

 

 

 随所に職人の心が感じられる、徹底したモノづくりへの姿勢

漆や蒔絵は日本の伝統工芸であり、職人の手による作業が不可欠です。そのため、並木製作所は当時の漆工芸の草分け的存在であった六角紫水氏を介し、その弟子でありのちに人間国宝となる蒔絵師・松田権六氏を招聘しました。1931年には松田氏を中心とした蒔絵の創作集団である「國光會」を発足。発足の目的は蒔絵万年筆の研究・発展・品質向上であり、國光會により現代までナミキの蒔絵万年筆は脈々と受けつがれています。

 

また、外装にとどまらずペン先にもすべて自社製造のものを使用しており、初の純国産万年筆を誕生させたパイロットならではの強いこだわりが感じられます。

 

1本の蒔絵万年筆を完成させるためにかかる制作期間は3か月以上ともいわれ、現在の機械生産型の商品に比べるとはるかに生産量では劣ります。しかし、手作業でしか得られない繊細かつ力強い技巧には日本古来の職人の心が感じられ、見る人の心を惹きつけてやまない魅力があります。

 

 

 

早くから海外戦略を視野に入れた先見の明

1925年の蒔絵万年筆の開発後、創業者の並木良輔氏と和田正雄氏は蒔絵万年筆の販路を欧米諸国へ広げるための海外視察に向かいます。創業からわずか8年後の1926年にはロンドンにパイロット事務所を設立、1930年にはアルフレッド・ダンヒル社と契約し、欧米の大都市への販路開拓に成功しました。1930年にロンドンで開かれた海軍軍縮条約調印式ではNamikiの蒔絵万年筆が署名に使われ、大きな話題となりました。

 

ともに商船学校に通い、船舶会社での船員経験もあった並木氏と和田氏にとって、当時まだまだ珍しかった海外への販路開拓にいち早く取り組んだことは自然なことであったのかもしれません。しかし、これにより「Namiki」ブランドは早くから海外において日本製万年筆の地位を確立することに成功したのです。

 

 

 

 

いかがでしたか?

 

90年の年月を経てなお世界中の愛好家を魅了するナミキ万年筆の魅力は、万年筆に施された美しい「漆」・「蒔絵」だけではなく、その裏にあるブランドの徹底したモノづくりへの姿勢や現在に至るまでの過程にもあるのではないでしょうか!

 

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