高級腕時計の時計通信

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21.7.2017

【時計業界の名作を知る】パテックフィリップ「トラベルタイム」 ~画期的なユーザー目線のGMTモデル~

Komehyo

ブログ担当者:永井

 

パテックフィリップは、1996年に特許取得した画期的な機能をもつ時計を発表します。それが、「トラベルタイム」です。

↑トラベルタイム REF.5034

 

このトラベルタイムは、時計業界としては画期的な機能のモデルでした。

 

なぜ画期的かと言うと、「GMT機能を簡単操作にしたから」です。

 

GMT機能とは、“第二時間帯表示”のことです。例えば、海外に行った場合に、“日本時間”と“訪問先の時間”がひとつの時計で分かる機能です。このGMT機能は、従来まで操作が複雑でした(※1)。しかし、パテックフィリップは、ユーザーが直感的に使えるような操作方法を取り入れました。しかし、このモデルは、パテックフィリップ内で、“コンプリケーション(COMPLICATED WATCH)”シリーズ、つまり“複雑機構”を持つモデルとして位置づけされます。

 

つまりトラベルタイムは、“簡単操作”というユーザーへの優しさを実現するために、見えない内部で複雑な機構を組んでいるのです。そのユーザーに寄った姿勢、画期的な機構をもつ存在は、まさに名作です。今回は、“時計業界の名作”を紹介する企画として、パテックフィリップ「トラベルタイム」を紹介します。

 

 

 

 

 

 

■トラベルタイムの簡単操作とは?

 

上で少し触れましたが、トラベルタイムは“簡単操作”が売りの時計です。少し説明しましょう。

 

まず、GMT機能は、基本的に“2つの国(都市)の時間”を同時表示する機能です。そのため、“時針に相当する針”が2つあります。ひとつは“通常の時針”、もうひとつは“GMT針”と呼びます。この2つの“時針に相当する針”を、別々の時間に設定することで、2カ国の時間を表示します。具体的には、“時針に相当する針”のひとつはホームタイムとして本国時間を刻み、もうひとつの時針を操作でずらして、訪問先の国の時間を作るのです。これが前提知識です。ここで注目したいことは、「時針をずらす操作」についてです。

 

従来のGMT時計の「時針をずらす操作」は、次の通りです。

①リューズを引く

②リューズを回す

 

しかし、トラベルタイムは「時針をずらす操作」が異なります。

①ケース横のボタンを押す

(※2つのボタンは“進む”と“戻る”)

 

従来のGMT時計は、最低でも2ステップの操作が必要です。もしねじ込み式リューズであれば、さらにもう一手間かかります。しかし、トラベルタイムは1ステップ操作で済みます。ボタンを押すだけで「時針をずらす操作」ができるのです。これなら、時計を腕に装着したままでも十分操作可能です。

 

 

 

 

 

 

 

■誕生し、消えていった「トラベルタイム」モデル

 

先に紹介しましたが、1996年に機構の特許を取得してトラベルタイムを発表します。最初の登場は、型式「5034」です(女性用は型式「4864」)。丸型の“カラトラバ”ベースですが、ベゼルには装飾がはいる手の込んだ作りです。

↑トラベルタイム5034

 

そして2001年にモデルチェンジを行い、型式「5134」が登場します。このモデルから流通量が増えた印象です。ケースデザインもモダンなカラトラバをベースにしたようなデザインとなり、「時針をずらすボタン」も一体感をもったデザインになります。また、シースルーバックを採用するようになります。

↑トラベルタイム5134

 

しかし、「5134」は、2009年で生産終了となってしまいます。カラトラバをベースとするデザインをもち、シンプルな操作性と巧みなディテールで、人気を博したモデルだけに残念です。

 

 

 

 

 

 

■スポーツモデルからトラベルタイムが誕生

 

しかし2010年以降、トラベルタイム機能は違った形で再登場します。それは、“スポーツモデル”へのトラベルタイム採用という形で実現します。つまり、パテックフィリップで代表的なスポーツウォッチである、「ノーチラス」、「アクアノート」で登場したのです。

 

・2011年:アクアノート・トラベルタイム「5164」

 

・2014年:ノーチラス・トラベルタイム・クロノグラフ「5990」

 

トラベルタイムを身に着ける方は、“世界を飛び回る”方をイメージします。世界を飛び回るアクティブな方に向けては、「スポーティなモデルの方がイメージに合う」と考えたのでしょうか。確かに、スポーツモデルであれば防水性も上がりますので、実用性は高くなります。

 

また、トラベルタイム機能を、人気シリーズの「アクアノート」や「ノーチラス」に採用することによって、“トラベルタイム”の知名度が上がったように感じます。その意味で、“スポーツモデル・トラベルタイム”は成果を挙げていると感じます。

 

また、2015年には型式「5524」という“パイロットウォッチ”デザインのトラベルタイムも誕生しています。トラベルタイムは、よりアクティブなモデルに採用されているイメージが続いています。

 

 

 

 

 

 

■最後に

 

ここまでで紹介したように、トラベルタイムは、

“カラトラバ”ベース → “スポーツモデル”

という移り変わりをしています。

 

新旧どちらのトラベルタイムを好むかは、人によって様々かもしれません。せっかくの機会ですので、僭越ながら、私の個人的な好みをお伝えします。

 

私の好みは、“カラトラバ”スタイルです。理由のひとつは、純粋にデザインに惹かれるからです。そして、もうひとつの理由は、“存在の希少性”を感じるからです。実は、“カラトラバ”ベースのトラベルタイムは「手巻式(Cal.215ベース)」で、“スポーツモデル”のトラベルタイムは「自動巻式(Cal.324ベース)」なのです。通常、ある程度生産数の多いパテックフィリップの複雑モデルは、クロノグラフを除いては、自動巻ムーブメントを使うことが普通です。しかし、“カラトラバ”トラベルタイムには、“手巻のCal.215に複雑機能を付加する”という珍しいことを行っています。そんなところが、なんとも魅力的です。

 

私の好みはあくまで個人的なものです。もちろん、スポーツモデルのトラベルタイムは、パテックフィリップの花形モデルですので、人気はこちらにあると思います。

 

とにかく、新旧どちらのトラベルタイムも、名作であることは確かです!

 

 

 

 

※1・・・GMT機能の操作については、過去の投稿「【ロレックスのよくある疑問】“GMTマスター”と“GMTマスターⅡ”はどこが違う? ~GMT機能の使い方の違いについて~」でも紹介しています。是非、ご参考ください。

 

 

 

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