高級腕時計の時計通信

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17.10.2022

【高級時計の基本】機械式時計でよく聞く「ローター」とは何のこと?

Komehyo

ブログ担当者:須川

 

■【高級時計の基本】機械式時計でよく聞く「ローター」とは何のこと?

 

機械式時計の話をする中で、よく登場する

 

ローター

 

という言葉をご存じでしょうか。

 

簡単に言うと、この言葉は、高級時計の世界では「自動巻の巻上げ部品」として使われることが多いです。

例えば、上にロレックスのムーブメント写真を用意しましたが、ムーブメントの半分を覆う“半円形”の部品が、ローターです。

 

この「ローター」は、機械式時計の話をするときにときどき登場する言葉なので、覚えておいて損はないと思います。そこで今回は、ローターについて説明します。またあわせて、この言葉がどのような場面でよく使われているかも解説します。

 

 

 

<目次>

■「ローター」とは?

■ローターの種類

■ローターはどういった場面でよく登場する?

 

 

 

 

■「ローター」とは?

 

まずは、ローターとは何なのかを説明します。

 

ローター(ROTOR)は、日本語にすると「回転子」となり、つまり、「回転する物体」を指します。そしてこれは、機械式時計の世界で使う場合、「自動巻の巻上げ部品」として使うことが一般的です(別の場面で使うこともありますが)。下の画像で言うと、ムーブメントの一番手間に見える半円形の部品がローターです。

↑半円形の部品がローター

 

ローターについてご理解いただくには、まず、これが「自動巻時計」の話である点を押さえておいてください。つまり、これは「ぜんまきを巻き上げて動作する時計」の部品の話なのです。

 

↑自動巻は、動力ゼンマイを巻き上げて動作

 

ローターは「部品」という話をしていますが、より具体的に言うと、ローターはムーブメントに付く「回転するおもり」です。そして、このローターが腕の動きに反応して回転し、その回転の力でぜんまいを巻き上げるのです。

 

 

仕組みとしては、

 

①(腕の動きなどで)ローターが回転する

 ↓

②ローターの回転が歯車に伝達

 ↓

③歯車が動力ゼンマイを巻き上げる

 

というものです。

 

これは、ムーブメントの役割で言うと、「自動巻機構」と言われる部分で、ローターはその機構の重要な部品のひとつと言えるでしょう。上では、①②③の3ステップで簡単に自動巻機構を説明しましたが、実際は、単純な構造ではありません。関連知識として、少し自動巻について補足をします。

 

例えば、ゼンマイ巻き上げは逆方向だと“ゼンマイを解く方向”になるので、「こちら方向に巻き上げないといけない」という正解の方向が決まっています。そのため、右にも左にも回ってしまうローターの回転力をそのまま使うと、問題が生じてしまいます。そこで、ローターから動力ゼンマイの間には、“回転を一方向に統一する仕組み”が組み込まれます。

↑回転を一方向へ統一する仕組み

 

その他には、ローターの回転をそのままゼンマイに伝えると負荷が高いので、“ローターの回転を減速する仕組み”も組み込まれます。さらに、ゼンマイが一杯まで巻き上がった後に、“ゼンマイを巻き切らない仕組み”も設けられます。

 

このように、自動巻の時計を作るには、いろいろな工夫が必要なのです。もちろん、自動巻の仕組みが出来上がったとしても、巻き上げ効率耐久性という、実利的な試行錯誤も必要になります。

 

 

 

 

 

■ローターの種類

 

今回はローターに着目した企画ですので、ここでは、ローターの種類を紹介していきます。

 

 

 

<ローターの種類>

 

①センターローター

一番オーソドックスなローターが、センターローターです。その名の通り、ムーブメントの中央を軸にして取り付けられます。ムーブメント全体を覆うぐらい大きいローターにできますので、重さや慣性モーメントを最大限に利用できます。「よく回転するローター」を求める場合に採用されます。

 

 

 

②マイクロローター

小ぶりなサイズのタイプが、マイクロローターです。ムーブメント全体を覆う形ではなく、ムーブメントの一部分に設置されます。センターローターより小ぶりで、重さと慣性モーメントの優位性を作り難いため、ローター素材は比重の高い素材(金、タングステンなど)にされることが一般的です。

 

マイクロローターは、ムーブメントと同じ階層に設置できるので、「ムーブメント厚を抑えたい」または「美しいムーブメントを隠さず見せたい」場合によく採用されます。

 

 

 

③ペリフェラルローター

ムーブメントの外周に設置されるローターは、ペリフェラルローターと呼ばれます。ペリフェラルは「周辺・周り」という意味で、上の画像でも、ムーブメントの周りに「輪」形のローターが付けられています。

 

これは、センターローターとマイクロローターの利点を二兎追いしたものです。つまり、センターローターのような大きなローターを採用でき、かつ、マイクロローターのようにムーブメントを隠さない特徴があります。さらに、ムーブメントの厚みを抑えることができる利点もありますが、逆に、ムーブメントの直径は大きくなってしまう傾向にあります。

 

 

 

上の3つが現代の代表的なローターですが、その他には、1940年代ごろを全盛とする「ハーフローター」や、ローターを2つ搭載した「ツインローター」など、いくつかの種類があります。

↑ツインローター

 

 

 

 

 

 

■ローターはどういった場面でよく登場する?

 

では、時計の世界で、ローターという言葉を使う場面は、どういった場面なのでしょうか?

 

私がよく遭遇する場面は、次の場面です。

 

 

 

①自動巻の「巻上げ方向」を気にする場面

 

例えば、自動巻時計をたくさん所有する人は、よく、ワインダー(自動巻き時計をくるくる回す装置)を使います。

↑ワインダー(ワインディングマシン)

 

この時、ワインダーを使う人は、「ワインダーをどちら方向に回すべきか」を考えます。つまり、「ローターがどちらに回転すれば、ゼンマイが巻き上がるのか」を気にするのです。

 

これは、専門用語を使うと、「両方向巻き上げ」と「片方向巻上げ(右巻きor左巻き)」に種類分けされます。

 

両方向巻上げは、ローターがどちら方向に回ってもゼンマイが巻き上がるタイプです。ロレックスを筆頭に、多くの自動巻時計はこのタイプです。使用場面で“腕の動き”がある程度見込める場合は、どちらに回転しても巻き上がるこちらの方が、巻上げ効率が高くなります。

 

片方向巻上げは、ローター回転の一方向のみがゼンマイを巻き上げる方向というタイプです(逆回りは空回り)。例えば、使用場面が「ほとんどデスクワーク」という方の場合、“腕の動き”が少なくなります。片方向巻上げは「空回りの反動」を利用するので、こういった少ない腕の動きでもローターが回転でき、巻上げを実行してくれます(※)。こちらはメジャーなタイプではなく、採用するムーブメントは一部となります。

 

※空回り方向は抵抗がないので、少しの腕の動きでローターが回ります。その回転の終わりに、反動でローターの逆回転が起こり、ゼンマイを巻き上げます。

 

↑両方向巻上げ(リバーサー式)

↑両方向巻上げ(ラチェット式)

↑片方向巻上げ

 

 

②時計の「異音」を気にする場面

 

ローターを気にする別の場面としては、時計内部の「異音」を気にする場合です。

 

例えば、当社の時計売り場にも、「時計から変な音がします」という相談をいただくことがあります。この場合、大きく分けると、2つの原因があります。

 

 

 

・正常な“ローター音”が気になる

→特に、片方向巻上げの時計はローターの回転音が大きいです。また、ヴィンテージ時計のハーフローターも、ローターがバンパーに当たる音がします。これらの音は正常なのですが、その音が気になるという方もいます。

 

・異常な“ローター音”が気になる

→衝撃などでローターの取り付け部が不具合を起こした場合、ローター付近から耳慣れない音を出すことががあります。これは、故障のために起こる異音です。

↑片方向巻上げはローター回転音が大きい

※画像:カルティエ/タンクフランセーズLM

 

 

 

 

 

■最後に

 

このように、「ローター」は時計の部品のひとつではありますが、それを知ることにより、より時計への理解が深まります。

 

例えば、片方向巻上げのローター音を気にする人がいるなら、「大丈夫ですよ」と言ってあげたりすることもできるでしょう。さらに、時計愛好家が所有する時計を見て、「マイクロローターですね」と言ってあげると、話も弾むかもしれません。

 

↑シースルーバックから見えるマイクロローター

※画像:パネライ/ラジオミール1940

 

特に、最近の自動巻時計は裏蓋をシースルーにすることも多いので、ムーブメントを見る機会はあるはずです。そこには、きっと、そのブランドならではのデザインのローターが付いていることでしょう。そして、そのローターは、一生懸命、動いていることでしょう。

 

そのローターを見たときに、ここまで読んでくださった皆さんなら、きっと、「機械式時計って、楽しい」と思えるのではないでしょうか!

 

 

 

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