高級腕時計の時計通信

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12.4.2020

なぜ今、時計業界でブロンズ(青銅)素材が注目を浴びるのか? ~「オンリーワン個体」になるブロンズ時計~

Komehyo

ブログ担当者:那須

 

高級腕時計の外装(本体ケース)素材は、ゴールドやステンレスが一般的です。しかし現在、時計メーカー各社が、ケース素材に特徴を持たせようと注力している状況があります。

 

その状況のなかで、近年、注目されているのが「ブロンズ(青銅)素材」です。

 

ブロンズは、時計業界において、「ここ最近のトレンドのひとつ」と言ってもいいほど注目されています。そこで今回は、「なぜ今、時計業界でブロンズ素材が注目を浴びるのか」を私なりに説明させていただきます。

↑ブロンズブームに火をつけた

パネライのPAM00382

 

 

 

 

 

 

■ブロンズ(青銅)とは?

 

まず先に、今回の前提知識として、「ブロンズ(青銅)」について説明をしておきます。

 

ブロンズは「青銅(せいどう)」という銅合金の一種で、銅をベースに錫(すず)などを配合した金属です。身近なものですと、10円玉銅像などが、よく目にするブロンズです。ブロンズの外見は、合金の素材・割合でも変化します。その中でも錫の配合割合が少ないものは、ピンクゴールドよりやや鈍く、赤銅色とも表現される「10円玉の色味」になります。

↑銅像

 

そして、ブロンズの最大の特徴は、経年による変質です。通常、皆さんが目にする10円玉は、「既に変色した10円玉」です。例え製造されて数年しか経っていない10円玉でも、「濃い褐色」に変色していることが多いでしょう。これは、青銅が素材として非常に反応しやすく、空気中の酸素や水分や塩分などと簡単に結びついてしまうからです。

 

そもそも、「青銅」と言う名前も、その変色によってもたらされる色から来ています。つまり多くの場合、最初は赤銅色だったブロンズも、どんどん褐色になり、最後は緑青色に変化してしまうことが多いのです。

 

 

<青銅の色の変化の例>

赤褐色

 ↓

褐色

 ↓

暗褐色

 ↓

黒褐色

 ↓

緑青色

 

 

 

 

 

 

■ブロンズ時計は「オンリーワン個体」になる!

 

ここまでの説明の通り、ブロンズは変質をしやすい素材です。このような“変質する素材”は、本来、「高級時計の外装素材には向かない」でしょう。事実、従来の時計ケースの主な素材は、ステンレス・ゴールド・チタンなど、錆びにくく元素が安定した素材ばかりです。

 

しかし今、ブロンズ材質を時計ケースに採用するメーカーが増えています。その理由は、経年変質がむしろ、「オンリーワン個体」としての価値を高めるからでしょう。

↑変質が「オンリーワン個体」をもたらす

※画像はモントレミリターレ

 

上の画像の時計も、赤銅色のブロンズ時計ですが、ケースが褐色に寄って行く反応が起こっています。これが初期の酸化現象です。先に「青銅の色の変化の例」を挙げましたが、このまま変化が進むと、より黒味が強くなり、最後に緑青(ろくしょう)とよばれる独特の風合いの錆が発生することになるでしょう。

↑緑青が発生した自由の女神像

 

ブロンズ時計の外観の変化は、もちろん、環境により十人十色であり、「オンリーワン個体」にどんどんと変化していくことになります。ステンレスやゴールドの時計も経年変化はありますが、ブロンズ時計と比較すると変質は少ないと言えるでしょう。それに比べて、ブロンズ時計は比較的短時間で変化が現れるので、「変化する過程をすぐに楽しめる」点で、大きな魅力を持っています。

 

また、ブロンズ時計が「緑青」の状態にまで至ると、通常の金属の色味とは大きく異なった個性を持つことになるでしょう。これはブロンズ時計において「究極の状態」と言えるかもしれませんが、ここまで来ると、差別化が最大化し、所有者の満足感もひとしおでしょう。

 

このように、ブロンズ時計は変質することで、「オンリーワン個体」としての付加価値が生まれます。その変化の違いにより個別の魅力が発生する点は、現在の高級時計のニーズにマッチしやすいと感じます。この点を次で説明します。

 

 

 

 

 

 

■ヴィンテージウォッチとブロンズ時計の共通点

 

現在、時計業界ではヴィンテージウォッチの需要が高まっています。ヴィンテージウォッチの人気が高まった理由はさまざまありますが、その要素のひとつに、「経年変化による個体差を楽しむことができる」点があります。このヴィンテージウォッチの人気の要素は、同じく経年変化が起こるブロンズ時計にも当てはまるのです。

 

ヴィンテージウォッチは明確な定義があるわけではないですが、おおむね70年代以前を指します。今から言うと、ヴィンテージウォッチは40年以上前の時計ですので、文字盤の変色、夜光塗料の色焼けなどが当たり前のようにあります。このような変質はヴィンテージウォッチにおいてマイナス要素ではなく、前向きに「変質を楽しむ」文化があります。

 

例えば、文字盤にひび割れの起こったロレックスのサブマリーナは、「スパイダー文字盤」と呼ばれて、評価されることもあるほどです。

 

ブロンズ時計も、「変質を楽しむ」という点では、ヴィンテージウォッチと同じです。そして、ヴィンテージウォッチの人気が高い現在において、同じ「変質を楽しむ」共通点があるブロンズ時計に、需要を見出す時計メーカーが現れるのも自然な流れです。

 

ただし、ブロンズ時計とヴィンテージウォッチは、「変質を楽しむ」際のポイントが少し違います。それは、以下です。

 

 

・ブロンズ時計

これからの変質を楽しむ

 

・ヴィンテージウォッチ

既に起きている変質を楽しむ

 

 

どちらも魅力的な時計ですが、ブロンズ時計は「これから楽しみやすい」という点で間違いなく評価できます。ヴィンテージウォッチは、40年以上前の時計が中心ですので、現在では新たな生産供給が起こりませんので、入手するのが大変困難です。また、機械式時計は定期的なメンテナンスが必要ですが、修理用のパーツも製造されていないことが多く、オリジナルを保ったまま修理することは非常に困難です。

 

その点で、最近になって登場しているブロンズ時計は、現代のムーブメントを搭載しています。そのため、修理用パーツで困る状況は考え難く、修理の心配はないでしょう。また、ブロンズ時計はケースの変質が中心です。文字盤や針などはすぐに変質しないので、時計としての機能を大きく損なわないのも安心な点です。

↑ブロンズを採用するゼニス

※パイロットタイプ20エクストラスペシャル

 

 

 

 

 

 

■最後に

 

このように、ブロンズ時計は“変化が起こりやすい素材”を利点にして、時計業界に、新たな魅力ある存在として登場しています。

↑ブロンズ時計は一緒に“成長”してくれます

※IWC「アクアタイマー・チャールズ・ダーウィン」

 

「多くの人が選ぶポピュラーなモデル」も魅力的ですが、その逆の存在である、「オンリーワン個性を発揮できる」ブロンズ時計も大変魅力的です。きっと、自分の成長とともに“成長”するブロンズ時計を見て、多くの方は愛着を覚えるでしょう。是非、節目の機会に購入し、自分と一緒に変化して“成長”してゆくのもよいかもしれません。

 

 

 

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