高級腕時計の時計通信

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13.5.2016

なぜロレックスとブライトリングは「シースルーバック」を採用しないのか?

Komehyo

ブログ担当者:山口

 

時計用語で「シースルーバック」といえば、裏蓋をガラス張りにすることです。人によっては、「裏スケルトン」「裏スケ」という呼び方をすることもあります。アンティーク時計の時代には普及していなかったシースルーバックも、現在ではメジャーな存在になっています。今では、時計の裏面から美しいムーブメントを覗くことは、機械式腕時計の大きな醍醐味の一つです。 

↑ムーブメントが鑑賞できる「シースルーバック」

※画像はランゲ&ゾーネのダトグラフ

 

多くの高級時計メーカーは多くのモデルにシースルーバックを採用し、裏から自慢のムーブメントを見せる(魅せる)ことで、多くの時計ユーザーから支持を集めています。しかし、頑なにシースルーバックを採用しないメーカーも存在します。その代表格がロレックスとブライトリングです(一部モデルでは採用しています)※1。なぜ両社は基本的にシースルーバックを採用しないのでしょうか? 私はその理由を考察してみました。そして私は、ロレックスとブライトリングは「質実剛健」というイメージを大事にしているからという結論に至りました。

 

今週は、ロレックスとブライトリングが「シースルーバック」にしない理由について書かせていただきます。

 

↑ロレックスとブライトリングの裏蓋

 

 

 

 

 

■「シースルーバック」採用のメリットとデメリット

 

まずは、時計がシースルーバックを採用することのメリットとデメリットについてです。前述した通りですが、メリットは「ムーブメントが鑑賞できること」です。特に腕時計は高級になればなるほど嗜好品としての意味合いが強くなります。つまり、芸術性や審美性の高さが評価されるポイントになります。外装だけでなく、内部の美しさやこだわりまで表現できた方が、消費者にその時計の良さを訴えやすいということは理にかなっています。

 

しかし同時に、「耐久性低下のリスク」というデメリットもあります。その「耐久性低下のリスク」を掘り下げると、以下のような点がリスクとなります。

 

 

 

<耐久性低下のリスク>

 

①裏蓋が透けていることにより、ムーブメントに注されたオイルが乾きやすい可能性

 

②裏蓋が「金属部分」と「ガラス部分」の2ピースになりパッキン部が増えるため、機密性(防水性)が脆弱になる可能性

 

③裏蓋が透けていることにより、磁気がムーブメントまで侵入しやすい可能性

 

 

 

ここでは3つのデメリットを述べましたが、実はこのデメリットには賛否があります。そこまで実用面に影響を及ぼさないと考える方も多くいます。その考えに立つと、シースルーバックのメリットを取ることが一般的です。それでもロレックスとブライトリングはシースルーバックを選択しないのです。

 

 

 

 

 

■「質実剛健」を目指すロレックスとブライトリング

 

では、なぜロレックスとブライトリングはソリッドバック(シースルーバックではないこと)の方を優先して採用するのでしょうか?その答えに近づくために、それぞれのメーカーが「時計業界においてどのような存在であるのか」に触れます。これは企業イメージということになりますが、そのイメージはメーカーがこれまで大切に築き上げたものなはずです。

 

 

<ロレックス>

ロレックスは1926年、史上初の完全防水ケース「オイスターケース」を開発しました。ねじ込み式裏蓋で密閉することで、強固な防水性を得ています。オイスターケースは改良を加えながら現在も採用されており、安定した防水性能を持つケースとしてユーザーから支持されています。もちろん昔からシースルーバックではなく、ソリッドバックという点も変わっていません。また、以前のブログ「時計業界人なら知っている、ロレックスのメディア戦略の凄さ」で紹介した、ドーバー海峡横断や、1953年のエベレスト登頂、1960年の深度実験など、その「実用性と信頼性」を全世界に向けて発信し続けてきた存在です。  

 

 

<ブライトリング >

現在のブライトリングは様々な種類のモデルがラインナップされています。ただ、最も色濃いのが「空」との関連性です。ブライトリングの時計はプロパイロットの計器として、絶大な信頼性を誇ります。アクロバット飛行チーム「ブライトリング・ジェットチーム」を自社で結成していることからも、プロパイロットとのつながりを伺うことができます。プロパイロット向けの時計ですから、当然、その仕様に抜かりはありません。確実な判断が求められる空でのミッションにも実際に即時対応できるよう視認性や耐久性を高めており、どのモデルも妥協のない仕上がりになっています。  

 

 

 

 

ロレックスとブライトリングの企業イメージをご理解いただけましたか?どちらのメーカーも「芸術性」ではなく、実用時計としての「信頼性」を重視しています。ブランド品として認識される腕時計だけに、世間に対してイメージを固めることが大事です。ロレックスやブライトリングは敢えて「シースルーバック」というデザイン面での大きな武器を捨てることで、それを上回る「質実剛健」なイメージをユーザーに向けてアピールしているのです。もちろん両社とも、ダイヤモンド装飾、ゴールド素材、天然石文字盤など宝飾性の高いモデルもラインナップしています。しかし、それは「質実剛健+α」の「α」部分として追加された要素にすぎません。長い年月が経っても両社がほとんどシースルーバックモデルをラインナップしないのは、今なお「実用性」や「信頼性」という質実剛健さを屈強なコンセプトとしているからではないでしょうか。    

 

 

 

 

 

高級腕時計というと「装飾品」としての側面が先行しがちですが、 ロレックスやブライトリングは、実用面に大きく比重を置いているメーカーです。 両社ともに秀逸なムーブメントを搭載しているのですが、「敢えて見せない」強いこだわりがあります。そのこだわりが、かっこ良いです! 

 

 

 

※1・・・ロレックスとブライトリングは一部モデルで限定的にシースルーバックを採用していますが、基幹モデルを含む大多数のモデルでは採用していません。

 

 

 

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