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21.3.2019

ロレックス|新作から垣間見える「ロレックスの戦略」 ~ロレックスの新作の出し方~

Komehyo

ブログ担当者:須川

 

2019年3月、今年もロレックスは、新作を発表しました。

 

その新作の中でハイライトとなるのは、

 

 

・GMTマスターⅡの青黒ベゼルの新型(126710BLNR)

 

・ヨットマスター18金WGの黒ベゼル(226659)

 

・シードゥエラーのコンビネーション(126603)

 

 

でしょう。

 

「GMTマスターⅡのモデルチェンジ」に関しては、多くの人が予想していた通りでした。しかし、多くの人が予想した「ミルガウスのモデルチェンジ」はありませんでした。逆に、「ヨットマスターの18金WGの黒ベゼル」や「シードゥエラーのコンビネーションモデル」は意外でした。

 

そして多くの方は、大きな別の興味があります。それは、「生産終了モデルは何か?」という興味です。

 

結果的に、ロレックスの公式ホームページ(こちら)を見る限り、GMTマスターⅡの型式116710が生産終了になったと思われます。これでGMTマスターⅡは、型式を「116710→126710」のように進化させ、全て新世代に切り替えたことになります。

↑生産終了の116710LN&BLNR

 

私は毎年、ロレックスの新作発表のたびに、「新作の出し方がロレックスらしい」と思います。なぜなら、以前からロレックスは、消費者の選択肢を誘導するようにラインナップを整理していくからです。

 

今回はちょうど新作発表のタイミングでしたので、ロレックスの新モデル発表から垣間見える、“ロレックスの戦略”を紹介しましょう。

 

 

 

 

 

 

■ロレックスの“伝統的な”新作の出し方

 

今回は、ロレックスの新モデル発表から、“ロレックスの戦略”を読み取りたいと思います。そのために注目したいポイントは、もちろん、“ロレックスの新作の出し方”です。具体的には、「どのような優先順位をもって新作を投入していくのか」という点を見ることが重要です。

 

では、“ロレックスの新作の出し方”を説明しましょう。

 

実は、ロレックスは伝統的に、

 

 

①ゴールドモデル

   ↓

②コンビネーションモデル

   ↓

③ステンレスモデル

 

 

という順番で新作を投入します。

 

例えば、現行モデルのサブマリーナデイトの新作投入の経緯を見てみましょう。

 

 

 

<現行サブマリーナデイトの登場経緯>

 

2008年:ゴールドモデル登場

※現在のメーカー価格は、3,520,800円税込み

↑型式116618LN

 

2009年:コンビネーションモデル登場

※現在のメーカー価格は、1,393,200円税込み

↑型式116613LN

 

2010年:ステンレスモデル登場

※現在のメーカー価格は、874,800円税込み

↑型式116610LN

 

 

このように、サブマリーナデイトの場合は、2008年にゴールドモデルを投入して、その後、年々価格を下げたモデルを投入しました。もちろん例外もありあますが、これが典型的なパターンです。つまり、ロレックスは高価格のモデルから先に新作を投入します。ただしこれは、ロレックスに限らず、さらに高級時計に限らず、多くの製品で見られる傾向でしょう。

 

例えば、ソニーのゲーム機プレイステーションシリーズは、最初にある程度高価な価格で新ハードを投入します。その新しいハードには、“新しいものに先に反応する層”が反応します。そして、“新しいものに先に反応する層”が購入を終えたころに、価格を下げた廉価版を投入し、“一般層”に購入してもらうのです。

 

ロレックスも同じで、新モデルを投入するときは、高価格のモデルを先に投入します。それを、“新しいものに先に反応する層”に購入してもらうのです。高級時計であれば、この“新しいものに先に反応する層”は、時計に興味の強い富裕層となります。ただし、ロレックスの巧みな点は、「高額」「やや高額」「一般価格」という“ランクの見せ方”が秀逸です。

 

それは、「純粋に“素材の違い”でランク差を見せ、かつ、順番に見せる」ことです。

 

まず、時計業界でよくあるパターンですが、新モデル投入時に、「ステンレス・コンビネーション・ゴールド素材を同時に投入する」ことがあります。これだと、多くの人が関心のあるステンレスモデルに注目が集まり、ゴールドモデルなどの高額品の影が薄くなります

 

また、別の新モデルの出し方として、「ハイエンドの複雑機構を搭載するモデル」を先に投入し、後から「機能を落とした廉価版」を投入するパターンもあります。これは、順番としては良いのでしょうが、“機能の違い”という一般の方の理解が難しいポイントで差別化するため、分かり難いでしょう。例えば、オーデマピゲの“前面シースルー”モデルのミレネリーは、最初に“AP脱進機搭載モデル”を投入し、その後、廉価版として“AP脱進機非搭載モデル”を投入しました。おそらく、一般の方が見ると、ほとんど同じ外観であるために、そのランクの違いが分からないでしょう。

↑“機能の違い”での差別化は難しい

画像:オーデマピゲ「ミレネリー4101」

 

やはり、その他のメーカーの新モデル投入パターンと比べても、ロレックスの“素材によるランクの見せ方”は徹底しています。その分かりやすさが、ロレックスの巧いところです。

 

 

 

 

 

 

■ロレックスの“新作の出し方”の変化

 

ここまでは、ロレックスの伝統的な新作の出し方を紹介しました。しかし近年、ロレックスが新作の出し方に“新たなパターン”を加えたと感じます。

 

ひとつは、「サイズ展開を広げる」というパターンです。

 

以前は、ロレックスの男性用のケース経は、

 

・スポーツモデル40mm

 

・ドレスモデル36mm

 

・スタンダードモデル34mm/36mm

 

でした。

 

しかし、最近は

 

・スポーツモデル42mm/43mm/44mm

 

・ドレスモデル40mm/41mm

 

・スタンダードモデル39mm

 

という新サイズを増やしています。

↑42mmサイズのエクスプローラーⅡ

 

これが、最近のロレックスの傾向のひとつです。例えば、今年の新作のヨットマスターの18金WGの黒ベゼル(226659)も、42mmというビッグサイズを投入しました。本来ヨットマスターは40mmが標準であることを考えると、やはり、サイズバリエーションを増やしたい意図を感じます。

 

また、最近の新たな別パターンは、GMTマスターⅡの新作に見ることができます。2018年に登場した新モデル、126710BLROは、ブレスレットで差別化されました。これは、新たなパターンです。

↑ジュビリーブレス

↑オイスターブレス

 

少し説明します。先ほど紹介した通り、従来であれば、ゴールド、コンビネーション、ステンレスという順番でロレックスは新モデルを投入してきました。しかし、2018年に登場したGMTマスターⅡは、ゴールド、コンビネーション、ステンレスモデルが同時に投入されました。これは、変化です。

 

その代わり、ブレスレットでの差別化を行いました。ステンレスはドレッシーな“ジュビリーブレス”、そして、ゴールドとコンビネーションはスポーティな“オイスターブレス”です。

 

過去にもGMTマスターは、スポーツモデルでありながら、オイスターブレスとジュビリーブレスを同時ラインナップしました。その時の傾向を振り返ると、オイスターブレスの方が人気が高かった状況がありました。

 

つまり、GMTマスターⅡの新作に対してロレックスは、人気の高いブレスレットを高価格モデルに採用して、どちらかというと亜種にあたるブレスレットをステンレスモデルに採用したのです。これが、新たな差別化のパターンです。

 

 

 

 

 

 

■最後に

 

今回は、ロレックスのラインナップから垣間見える、“ロレックスの戦略”を紹介しました。

 

その戦略をまとめると、

 

・“時計に興味が強い富裕層”に先に新作を購入してもらい、満足感を与える

 

・富裕層の先行所有が進んだ後で、一般層に向けて普及モデルをリリースする

 

というものです。

 

ただし最近は、「新サイズ展開」「ブレスレットでの差別化」など、新たなパターンの新作投入パターンも出てきました。2019年の新作でも、それを感じることができました。

 

この新たなパターンは、ロレックスの新作予想を難しくしています。そのため、多くの人は、ヨットマスターの新サイズ(42mm)の登場は見抜けなかったのです。

 

おそらく来年以降も、ロレックスの新作予想は難しくなるに違いありません!

 

 

 

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